掛取引が資金繰りに与える影響
商取引において現金取引だけで商売が完了している場合は少ないのではないでしょうか?
現金で販売する小売業においても商品の仕入は買掛取引をしていたり、顧客がクレジットカードなどを使用すれば売掛取引になったりします。
今回はその掛取引が資金繰りにどう影響を与えるかを説明します。
このような会社があります。
卸売業のような収益構造の会社です。
4月から始めて10月までの累計利益は売上比で3%程度です。すべてが現金取引なら10月が終わった段階で現金は29百万円増えることになります。
この会社が掛取引をした場合、決済条件によって資金繰りにどう影響を与えるか見てみましょう。
【Case1】買掛金の支払いが先になる場合(支払先行)
決済条件は売掛金は翌月入金、買掛金は当月支払いとします。(取引は全て掛取引、諸経費は当月支払い)
この決済条件で現金残高と売掛金・買掛金残高の推移を見てみます。(元手100百万円で始めています。)
この場合、現金は元手100百万円から59百万円に41百万円減少しています。(途中がマイナスなのはここでは無視してください)
累計利益は29百万円出ているのになぜでしょう?
元手100百万円から減少した△41百万円は売掛金と買掛金の決済条件の差から来ています。
売掛金の回収よりも買掛金の支払いの方が早いという条件がこの資金減少の要因です。
このような日常的な資金の差額を運転資本(運転資金)といいます。
前表にある10月の売掛金残高から買掛金残高を引いた運転資本を見ると+70百万円になっています。
プラスということは売掛金の残高が多い=未回収分が多いということになります。未回収が多いということは資金の流入が支払いよりも少ないということです。この未回収分は得意先への貸し付けと例えることも出来ます。
つまり10月における59百万円の現金の要因は、100百万円の元手に29百万円の利益(+)と70百万円の得意先への先払い(貸付)(−)ということなのです。
このような支払先行の場合、売上が上昇すれば一時的に資金が減少します。(4月から7月までの状況のようになるということです)
資金繰りにおいてはその点を注意する必要があります。
【Case2】売掛金の回収が先になる場合(回収先行)
決済条件によって資金が減るということはその逆もあります。
決済条件を売掛金は翌月入金で変わらず、買掛金は翌々月支払いに変えてみます。
この決済条件で現金残高と売掛金・買掛金の推移を見てみます。
case1とは打って変わって現金は179百万円と大きく増加しました。
この場合、売掛金の回収よりも買掛金の支払いの方が遅いという条件がその要因です。
つまり10月における179百万円の現金の要因は、100百万円の元手に29百万円の累計利益(+)と50百万円の仕入先からの調達(+)ということなのです。
しかし、ここで注意が必要なのは運転資本の+50百万円は支払う(返す)お金ということなのです。このお金の増加が全て商売の儲けからきていると勘違いしてしまうと資金繰りを危うくします。
運転資本の減少で資金が増えたことを儲けと勘違いして資金繰りを危うくする例を挙げます。
【Case3】Case2の条件で設備投資をする場合
Case2では8月の現金残高が261百万円と順調に増えています。
そのため会社は現金の有効活用を考え、販売管理システムを80百万円かけて導入することにしたのです。現金で買うと値引きも多かったため現金で購入することにしました。
冒頭の損益計算書を見て頂くと8月までの儲けは累計37百万円になります。
販売管理システム代金80百万円の不足分である43百万円は仕入先から借りた資金を流用するような形になります。
仮に10月までの商売で区切った時、資金の状況はこうなります。
8月の段階では現金残高は181百万円と元手を上回っているため安心していると、12月には現金は49百万円と元手の半分以下になりました。
販売管理システムの効果で費用が削減されるとしても短期間ではカバーできないでしょう。
これは仕入先からの調達という短期的な資金の調達を、販売管理システムという長期的な設備投資に使ってしまっていることが危険なのです。
“支払は遅ければ遅いほうがいい”という考えを持っている方はこのようなケースに注意が必要です。 売上上昇時には一時的に現金残高が利益(儲け)よりも大きくなる傾向にあるため、短期的な資金を必要以上に長期的用途に使用していくことが多くなるのです。
そして売上が下降した時に遅くなっている支払いと流用した長期資金の負担から資金不足に陥ります。
何に使っても大丈夫なのは利益(儲け)です。
それ以外で短期的に調達したお金は短期的な運用(売掛金や買掛金など)、長期的に調達したお金は長期的な運用(設備資金や長期借入金など)というようにお金を使わないと資金繰りを圧迫することになる場合があります。
この例のように単純にすると分かりやすいのですが、ここに借入や税金または継続した商取引で原因を掴みづらくなることが多くなります。(それを知るために利用されるのが資金運用表です)
掛取引における資金繰りの影響を把握して資金繰りを有利にすすめましょう。
◇資金繰り改善支援ではこのような資金サイクルについても着目し支援を行います。
解決のためのメニュー:【資金繰り改善支援】


