財務分析事例 【機械卸売業 N社】
当社で行う財務分析の手法や流れについて事例企業を元に解説していきます。
分析は「情報・事例:財務分析の視点」で説明したように行いますが、ここでは要点のみを説明していきます。
なお、当財務分析事例で使用する財務諸表の数値は実在する企業のものではありません。ご了承ください。
事例企業の概要:
N社は機械卸売業です。
当該業界に関わる者のなかでは認知度の高い業界中位規模の企業です。
卸売業らしい財務諸表の特徴を持った企業ですが、財務分析から転換点を迎えていることがわかります。
財務分析:
各分析シート
総合チャート:

収益性、安全性、規模・成長性の主要データを抜粋し評価した総合チャートです。
同業種間における標準比較の規模や最終年度の成長率から規模・成長性は5点中3.8点と高い数値です。しかし収益性、安全性は低く2点を割り込んでいます。
財務分析から導き出される点:

(図:売上高、売上債権、商品、買入債権推移表)
売上高は、1期から2期が12%減、2期から3期が7.4%増と推移しています。
これに対し売上債権は、0.8%減、7.1%増であり、買入債務は30.6%増、17.1%増と2期目に大きな変化があったことを伺わせます。(割引手形、裏書手形を含めてもその傾向は変わりません)売上債権回転期間、買入債務回転期間も同様に変化が表れています。
また、商品(たな卸資産)も、1期から2期が20.8%増と売上高の推移と連動しない数値の動きになっています。
これらから考えられるのは無理な販売から来る売掛金の回収遅延、商品戦略のミスからくる在庫増、支払条件の変更(延期)などです。
さらに、その他流動資産は1期から2期が129%増、2期から3期が58%増と大幅に増加しています。増加したうちの主要科目は前渡金でした。
買入債務の増加とあわせてその原因を確認することが必要になります。
1期から2期間の同業標準比較として同業種売上高が7.2%増のなか、当社は12%の減少となっており競争環境のなかでも遅れをとっているといえます。
資金面からみると資金繰りは忙しくなっていることが見てとれます。
まず、当座比率の低下は顕著です。1期86.0%から3期72.2%まで低下しています。一般的には当座比率は100%以上が望ましいと言われています。
現金預金は1期から3期で半分近くにまで減少し、月商と比較しても半分近くにまで減少しています。
この状態では売上が回復した時に発生する先払いの資金(運転資本)を用意できなくなる可能性も考えられます。
有利子負債は1期から3期で228,593千円圧縮されています。その内訳として短期借入金は約277,762千円返済されているが長期借入への借換は83,658千円にとどまっています。(他は割引手形の減少)
それにも関わらず支払利息は増加しており金利負担が増加しています。
後述のように営業キャッシュフローでの返済原資が乏しいため現金預金の減少につながりました。
キャッシュフロー計算書から注意すべき点は営業キャッシュフローの少なさです。
営業CFの売上高に占める割合であるキャッシュフローマージンは営業CFの多い3期でもわずか0.6%です。
また、企業が自由に使える資金であるフリーキャッシュフローは3期ではマイナスに陥っています。
この場合、借入金の返済原資がゼロということになり資金が流出していくことから早急に改善が必要です。
1期から2期と2期から3期合算の資金運用表から資金の大局的な流れを見ると、やはり経常資金の金融債務返済のために現金預金を使用している点が目立ちます。
また、決算資金(配当金、納税資金)の重さも目につきます。
2期に行なっている投資は現金預金減少の観点から考えても慎重に必要性を検討することが重要です。
N社に対する提案:
◇資金面
・急激な資金減少に対処するため早急にリスケジュールを検討する。(資金調達も同時に行う)
・投資等営業に関わらない支出の見直し、資金化の検討
◇営業面
・営業キャシュフロー増大のために粗利益分析を行う。数量、単価、原価の要因分析を行いキャッシュフロー増加の策を導きだす。
・回収・支払・在庫の状況を精査する。未回収債権や仕入原価に影響を与えている支払条件など注意深く確認する。
この後はこの財務分析で焦点を定めた点をさらに深めたり、数値に反映されない価値を分析するなどし具体的な実行策を立案していきます。
◇経営分析はこの財務分析のように数値で表されるものに加え、数値以外の経営環境も分析します。
解決のためのメニュー:【経営分析】




